貧困のない世界を創る~ソーシャルビジネスと新しい資本主義~

[目標]開発分野で誰も成し遂げたことのない変化を起こしたい

[現状]知識、能力、行動が不足している

[課題]登るべき山とルートが明確ではない

[目的]手段を学び、分野と立場を明確にする

 

<題名>

貧困のない世界を創る

<著者>

ムハマド・ユヌス

<発行>

初版:2008年10月/第7版:2012年6月

 

<特徴>

ユヌス氏はバングラデッシュの社会起業家である。彼は「生きるために必要な最低限のモノ・サービスが手に入らない、もしくはその獲得のために自らの重要な資産を犠牲にしている人」に対する自立の機会を与え続けている。そのお金や支援の流れは、持つものから持たざる者へ、ただ一方向に流れているわけではない。あらゆる人々に価値を生み出す循環がそこにはある。本書から、世界の貧困問題に対する一つの解決策として、ビジネスのあり方を学ぶことができる。

 

<要点>

[ソーシャルビジネスとは]

  • ソーシャルビジネスの目的は「関わった人々の生活のために社会的恩恵を生み出す」こと。目標はコストの回収。回収されたコストは投資者に再分配されることはなく、事業の拡大や新しい事業のために再投資される。利益を生み出し続けるため、一度セットアップされると、持続的で規模の大きい活動ができる傾向にある。

[2種類のソーシャルビジネス]

  1. 投資家によって所有され、現地の人々へのモノ・サービスの提供により、貧困削減に貢献する。
  2. 現地の人々によって所有され、事業であげた利益を所有者間同士で分配することで、貧困削減に貢献する。その企業が提供するモノ・サービスが、社会的利益を生み出すケースと、生み出さないケースがある。

 

[他機関との比較]

  • 政府:市場のルールを作る上で重要だが、効率性とスピードに難あり。
  • NPO:絶望的な状況にある人への手助けが大きい、寄付に頼る傾向があるため、持続性と事業規模が制限される。資金集めに多大な資本が必要。
  • CSR:最終的に、企業の利益>社会的利益 となる。
  • 国際機関:貧困削減は大規模な経済成長に焦点が当てられる。(機械化とインフラ整備に偏る傾向あり)

 

 

<学び>

  • ソーシャルビジネスは個人の強い意志の元に創造される。
  • ソーシャルビジネスと一般的なビジネスの違いは最終目的の設定にある。前者は「社会的な利益追求」にあるが、後者は「利益の最大化」にある。
  • ソーシャルビジネスも自由市場で戦うことになるため、他のビジネスとの競争や、ソーシャルビジネス同士での競争に勝たなければいけない。
  • 「社会的利益追求」を求める会社 vs 「金銭的な利益最大化」を求める会社、だと、資本(人・モノ・カネ・情報)の獲得スピードと大きさに大きな違いが出る。その中でも競争に勝つ必要があるため、戦略の工夫と、利益が出るまでいかに事業を持続できるかを意識しなければいけない。
  • お金をどのように循環させるか、工夫が必要。
  • ソーシャルビジネスの社会的利益追求方法はビジネスを通してだけ行われるのではない。教育や啓発活動、職能訓練など、利益を追求する過程で生み出せる社会的利益は工夫次第で多種多様である。
  • ITの広がりは、様々な地域で情報とサービスの供給を加速させる。政治分野でも民主主義の中で、国民一人一人により大きな発言権を付与する。

 

<感想>

大枠でソーシャルビジネスの定義や、役割、特徴、他の組織との違いを掴むことができた。コスト回収と利益の再投資ができる点で、長くやればやるほど、事業規模の幅や事業数が広がっていくのだと思う。現場で自由に活動したいため、NPOかソーシャルビジネスを今後より学んでいくつもりだ。山を登る方法は学ぶことができているが、どの山を登るのかをまだ決められていない。様々な事業に触れつつ、よりNPOとソーシャルビジネスの可能性を学びたいと思う。